- SES契約の5種類(準委任・請負・基本契約・個別契約・NDA)のテンプレートを条文例付きで公開
- 契約書作成時のチェックリスト付きで抜け漏れを防止
- よくあるトラブル事例と対処法も解説
SES契約のトラブルの8割は「契約書の不備」が原因です。 偽装請負の指摘、精算幅の揉め事、途中解約時の損害賠償——SES事業で実際に起きるこれらの問題は、適切な契約書があれば未然に防げます。
しかし、SES契約に特化したテンプレートは世の中にほとんど出回っていません。この記事では、SES事業に必要な5種類の契約書(基本契約・個別契約・準委任・請負・NDA)すべてのテンプレートを条文例付きで公開します。チェックリストとトラブル事例もあわせて解説するので、法務の基盤づくりにお役立てください。
- SES契約の基礎知識と契約種類の違い
- 準委任契約・請負契約・基本契約・個別契約・NDAのテンプレート
- 各条文の意味と記載時の注意点
- 契約書作成のチェックリスト
- 実際のトラブル事例と対処法
本記事のテンプレートは一般的な参考例です。実際の契約締結にあたっては、必ず弁護士等の専門家に相談し、個別の状況に応じた内容にカスタマイズしてください。本テンプレートの使用により生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。
SES契約の基礎知識
SES契約とは
SES(システムエンジニアリングサービス)契約とは、エンジニアの技術力(役務)を提供する契約です。法的には「準委任契約」に分類され、成果物の完成義務がないのが特徴です。
派遣契約との違い
SES契約と派遣契約の最大の違いは「指揮命令権の所在」です。
| 項目 | SES契約(準委任) | 派遣契約 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 準委任契約 | 労働者派遣契約 |
| 指揮命令権 | 受託側(SES企業) | 派遣先企業 |
| 成果物責任 | なし(善管注意義務) | なし |
| 必要な許認可 | なし | 派遣業許可 |
| 労働者保護 | 民法・下請法 | 派遣法 |
SES契約にもかかわらず、クライアントがエンジニアに直接指揮命令を行うと「偽装請負」として違法になります。この点を明確にするため、契約書の整備が非常に重要です。
SES事業に必要な契約書の全体像
SES事業を運営するうえで、最低限必要な契約書は以下の5種類です。
- 基本契約書 — 取引全体の基本ルールを定める
- 個別契約書(注文書・注文請書) — 案件ごとの具体条件を定める
- 準委任契約書 — SES(役務提供)の具体的な条件を定める
- 請負契約書 — 成果物納品型の案件で使用する
- 秘密保持契約書(NDA) — 機密情報の取り扱いを定める
以下、各契約書のテンプレートを順に解説します。

テンプレート①:基本契約書(取引基本契約書)
基本契約書は、継続的な取引を行う企業間で最初に締結する包括的な契約です。
基本契約書テンプレート(条文例)
システムエンジニアリングサービス基本契約書
株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社△△△△(以下「乙」という)は、
乙が甲に対して提供するシステムエンジニアリングサービスに関し、
以下のとおり基本契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、乙が甲に対してシステムエンジニアリングサービス(以下「本サービス」
という)を提供するにあたり、甲乙間の基本的な取引条件を定めることを目的とする。
第2条(個別契約)
1. 本サービスの具体的な内容、期間、報酬等は、本契約に基づき、
甲乙間で別途締結する個別契約において定めるものとする。
2. 個別契約は、甲が発行する注文書に対し、乙が注文請書を発行することにより
成立するものとする。
3. 個別契約の内容が本契約と矛盾する場合は、個別契約の内容を優先する。
第3条(業務遂行)
1. 乙は、善良な管理者の注意をもって本サービスを遂行するものとする。
2. 本サービスの遂行にあたり、乙の担当者に対する指揮命令は乙が行うものとし、
甲は乙の担当者に対して直接の指揮命令を行わないものとする。
3. 乙は、業務の進捗状況について、甲の求めに応じ適宜報告を行うものとする。
第4条(担当者の選定・変更)
1. 乙は、本サービスに従事する担当者を自らの判断で選定するものとする。
2. 甲は、合理的な理由がある場合に限り、乙に対して担当者の変更を
要請することができる。乙は当該要請を誠実に検討するものとする。
第5条(報酬および支払条件)
1. 本サービスの報酬は、個別契約において定めるものとする。
2. 報酬の支払いは、月末締め翌月末払いとする。
3. 稼働時間が個別契約で定めた精算幅の上限を超過した場合、
超過時間分の追加報酬を支払うものとする。
4. 稼働時間が個別契約で定めた精算幅の下限を下回った場合、
不足時間分を報酬から控除するものとする。
第6条(秘密保持)
1. 甲および乙は、本契約および個別契約に関連して知り得た相手方の
技術上・営業上の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく
第三者に開示・漏洩してはならない。
2. 前項の義務は、本契約終了後3年間存続するものとする。
第7条(知的財産権)
本サービスの遂行過程で生じた発明、著作物その他の知的財産に関する
権利の帰属は、個別契約において定めるものとする。
別途定めがない場合は、当該知的財産は甲に帰属するものとする。
第8条(損害賠償)
1. 甲または乙が本契約もしくは個別契約に違反し、相手方に損害を
与えた場合、当該違反した当事者は相手方に生じた直接損害を
賠償する責任を負う。
2. 損害賠償の累計額は、損害発生の原因となった個別契約の報酬
総額を上限とする。
3. いかなる場合においても、間接損害、逸失利益、特別損害については
賠償の責任を負わないものとする。
第9条(再委託)
乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本サービスの
全部または一部を第三者に再委託することができる。この場合、
乙は当該第三者の行為について一切の責任を負う。
第10条(契約期間)
1. 本契約の有効期間は、締結日から1年間とする。
2. 期間満了の1ヶ月前までに甲乙いずれからも書面による
終了の通知がない場合、本契約は同一条件で1年間更新されるものとし、
以後も同様とする。
第11条(解除)
1. 甲または乙は、相手方が以下の各号に該当した場合、催告なく
直ちに本契約および個別契約を解除することができる。
(1)本契約または個別契約に重大な違反があった場合
(2)支払停止もしくは支払不能となった場合
(3)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の
申立てがあった場合
(4)その他、信用状態が著しく悪化したと認められる場合
第12条(反社会的勢力の排除)
甲および乙は、自らが暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、
その他反社会的勢力に該当しないことを表明・保証し、
将来にわたってこれに該当しないことを確約する。
第13条(合意管轄)
本契約に関する紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第14条(協議事項)
本契約に定めのない事項または本契約の解釈に疑義が生じた場合は、
甲乙誠実に協議のうえ解決を図るものとする。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
年 月 日
甲:
住所:
名称:株式会社○○○○
代表者: 印
乙:
住所:
名称:株式会社△△△△
代表者: 印
基本契約書のポイント
- 第3条2項が最重要。指揮命令権が受託側(乙)にあることを明記し、偽装請負リスクを回避
- 第5条の精算幅は数値を基本契約に入れず、個別契約で案件ごとに設定するのが柔軟
- 第8条の損害賠償上限は必ず設定する。上限がないと青天井のリスクを負う
- 第12条の反社条項は近年必須。取引先の信用調査としても機能する
テンプレート②:個別契約書(注文書・注文請書)
個別契約は、案件ごとの具体的条件を定める契約です。実務では注文書・注文請書の形式が一般的です。
個別契約書テンプレート(条文例)
個別契約書(注文書)
注文書番号:SES-2026-001
発行日:2026年○月○日
株式会社△△△△ 御中
下記のとおり、システムエンジニアリングサービスを発注いたします。
記
1. 基本契約:2026年○月○日付 SESサービス基本契約書に基づく
2. 業務内容:
(1)業務名称:○○システム開発支援
(2)業務概要:Javaを用いたWebアプリケーションの設計・開発・テスト
(3)作業場所:甲のオフィス(東京都○○区○○ 1-2-3)
※リモートワーク:週2日まで可
(4)使用技術:Java 17、Spring Boot 3.x、PostgreSQL、AWS
3. 担当者:
(1)技術者名:○○ ○○
(2)役割:SE(設計〜結合テスト)
(3)スキルランク:ミドル
4. 契約期間:
(1)開始日:2026年○月○日
(2)終了日:2026年○月○日(3ヶ月間)
(3)更新:双方合意のうえ、1ヶ月単位で更新可能
5. 報酬:
(1)月額単価:750,000円(税別)
(2)精算幅:140時間〜180時間
(3)超過単価:4,688円/時間(月額÷160時間)
(4)控除単価:4,688円/時間(月額÷160時間)
6. 支払条件:
(1)締め日:月末
(2)支払日:翌月末
(3)支払方法:銀行振込(振込手数料は甲の負担)
7. その他:
(1)業務管理責任者(乙側):○○ ○○
(2)窓口担当者(甲側):○○ ○○
(3)報告:月次の業務報告書を翌月5営業日以内に提出
株式会社○○○○
代表取締役 ○○ ○○ 印
注文請書
注文書番号:SES-2026-001
発行日:2026年○月○日
株式会社○○○○ 御中
2026年○月○日付注文書(注文書番号:SES-2026-001)の内容を確認し、
お受けいたします。
株式会社△△△△
代表取締役 ○○ ○○ 印
個別契約書のポイント
- 精算幅の上下限は必ず明記。140-180時間が一般的だが、案件により異なる
- 超過・控除の単価計算式を明記しておくとトラブルを防げる
- 業務管理責任者を記載することで、偽装請負対策になる
- 注文請書には収入印紙が必要(電子契約の場合は不要)
テンプレート③:準委任契約書
基本契約と個別契約を一体化した単発取引向けの準委任契約書テンプレートです。
準委任契約書テンプレート(条文例)
システムエンジニアリングサービス準委任契約書
株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社△△△△(以下「乙」という)は、
システムエンジニアリングサービスの提供に関し、以下のとおり準委任契約を締結する。
第1条(業務内容)
乙は甲に対し、以下の業務を遂行する。
(1)業務名称:○○システム開発支援業務
(2)業務内容:○○システムに関する設計、開発、テスト業務
(3)作業場所:甲の指定する場所
(4)契約期間:2026年○月○日〜2026年○月○日
第2条(準委任)
1. 本契約は民法第656条に基づく準委任契約とし、乙は成果物の完成義務を負わない。
2. 乙は善良な管理者の注意をもって本業務を遂行する義務を負う。
第3条(指揮命令)
本業務に従事する乙の担当者に対する指揮命令は、乙が行う。
甲は、乙の担当者に対し、直接の指揮命令を行ってはならない。
甲から乙への業務上の要請は、乙の業務管理責任者を通じて行うものとする。
第4条(報酬)
1. 月額報酬:金○○万円(税別)
2. 精算幅:月間○○時間〜○○時間
3. 精算幅を超過した場合:超過1時間あたり金○○円を加算
4. 精算幅を下回った場合:不足1時間あたり金○○円を減額
第5条(支払方法)
甲は、毎月末日を締め日とし、乙からの請求書受領後、
翌月末日までに乙の指定する銀行口座に振り込む方法で支払う。
第6条(秘密保持)
甲乙は、本契約に関連して知り得た相手方の秘密情報を、
事前の書面による承諾なく第三者に開示・漏洩してはならない。
本条の義務は契約終了後3年間存続する。
第7条(個人情報の取扱い)
乙は、本業務の遂行にあたり甲から提供される個人情報を、
個人情報保護法その他関連法令に従い適切に取り扱うものとする。
第8条(知的財産権)
本業務の遂行過程で生じた著作物等の知的財産権は、
報酬の支払完了をもって甲に移転するものとする。
第9条(損害賠償)
甲または乙が本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、
直接かつ通常の損害に限り賠償する。
賠償額の上限は、本契約の報酬総額とする。
第10条(契約の解除・解約)
1. 甲乙は、1ヶ月前の書面による通知をもって、本契約を中途解約できる。
2. 相手方に重大な契約違反があった場合、催告なく直ちに解除できる。
第11条(反社会的勢力の排除)
甲乙は、自らが反社会的勢力に該当しないことを表明・保証する。
第12条(合意管轄)
本契約に関する紛争は、○○地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。
年 月 日
甲:株式会社○○○○ 代表取締役 ○○ ○○ 印
乙:株式会社△△△△ 代表取締役 ○○ ○○ 印
テンプレート④:請負契約書
SES企業が成果物納品型の案件を受注する場合に使用します。
請負契約書テンプレート(条文例)
ソフトウェア開発請負契約書
株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社△△△△(以下「乙」という)は、
ソフトウェア開発業務の請負に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条(業務内容)
甲は乙に対し、以下の業務を委託し、乙はこれを請け負う。
(1)業務名称:○○システム開発
(2)開発内容:別紙仕様書のとおり
(3)納品物:ソースコード一式、設計書一式、テスト結果報告書、
操作マニュアル
(4)開発期間:2026年○月○日〜2026年○月○日
第2条(請負)
本契約は民法第632条に基づく請負契約とし、乙は第1条に定める
納品物を完成させる義務を負う。
第3条(請負代金)
1. 請負代金:金○○○万円(税別)
2. 支払条件:
(1)着手金:契約締結後10日以内に代金の30%
(2)中間金:基本設計完了後に代金の30%
(3)残金:検収完了後に代金の40%
第4条(納品・検収)
1. 乙は、開発期間終了日までに納品物を甲に納品する。
2. 甲は、納品日から14営業日以内に検収を行い、結果を乙に通知する。
3. 検収合格をもって納品完了とする。
4. 甲が検収期間内に合否を通知しない場合、検収に合格したものとみなす。
第5条(契約不適合責任)
1. 検収完了後、納品物に契約不適合(バグ等の欠陥)が発見された場合、
乙は無償で修補を行うものとする。
2. 前項の契約不適合責任の期間は、検収完了日から6ヶ月間とする。
3. 乙は修補に代えて、代金の減額または損害賠償で対応することもできる。
第6条(仕様変更)
1. 甲が仕様の変更を求める場合、書面をもって乙に通知するものとする。
2. 乙は、仕様変更が納期・代金に影響する場合、その旨を甲に通知し、
甲乙協議のうえ変更内容・追加費用・納期変更を決定する。
第7条(知的財産権)
1. 納品物の著作権(著作権法第27条、第28条の権利を含む)は、
請負代金の全額支払完了時に乙から甲に移転する。
2. 乙が従前から保有していた汎用的なプログラムの著作権は乙に留保され、
甲に対して利用許諾されるものとする。
第8条(秘密保持)
甲乙は、本契約に関連して知り得た相手方の秘密情報を、
事前の書面による承諾なく第三者に開示・漏洩してはならない。
第9条(再委託)
乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本業務の全部または一部を
第三者に再委託してはならない。
第10条(損害賠償)
甲または乙が本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、
直接かつ通常の損害に限り賠償する。
賠償額の上限は、請負代金の総額とする。
第11条(解除)
甲乙いずれかが本契約に重大な違反をした場合、相手方は催告なく
直ちに本契約を解除することができる。
第12条(反社会的勢力の排除)
甲乙は、自らが反社会的勢力に該当しないことを表明・保証する。
第13条(合意管轄)
本契約に関する紛争は、○○地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。
年 月 日
甲:株式会社○○○○ 代表取締役 ○○ ○○ 印
乙:株式会社△△△△ 代表取締役 ○○ ○○ 印
請負契約書のポイント
- 第5条の契約不適合責任は2020年民法改正で「瑕疵担保責任」から名称変更。期間は6ヶ月〜1年が一般的
- 第6条の仕様変更条項がないと、口頭の追加要望で工数が膨れるリスクがある
- 第7条の知的財産権は汎用プログラムのライセンス留保を明記することで、乙の資産を保護
テンプレート⑤:秘密保持契約書(NDA)
案件情報や技術情報の漏洩を防ぐため、取引開始前に締結する契約です。
NDAテンプレート(条文例)
秘密保持契約書
株式会社○○○○(以下「甲」という)と株式会社△△△△(以下「乙」という)は、
相互に開示する秘密情報の取扱いに関し、以下のとおり秘密保持契約を締結する。
第1条(秘密情報の定義)
本契約における「秘密情報」とは、甲乙間のシステムエンジニアリング
サービスに関連して、開示者が受領者に開示する以下の情報をいう。
ただし、口頭で開示された情報は、開示後14日以内に書面で
秘密である旨を通知したものに限る。
(1)技術情報(設計書、ソースコード、仕様書、ノウハウ等)
(2)営業情報(顧客リスト、価格情報、事業計画等)
(3)人事情報(従業員の個人情報、給与情報等)
(4)その他、開示者が秘密である旨を明示した情報
第2条(秘密情報の除外)
以下に該当する情報は秘密情報に含まれない。
(1)開示時に既に公知であった情報
(2)開示後に受領者の責めに帰すべき事由なく公知となった情報
(3)開示前に受領者が正当に保有していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負わず取得した情報
(5)受領者が秘密情報を利用せず独自に開発した情報
第3条(秘密保持義務)
1. 受領者は、秘密情報を厳に秘密として保持し、開示者の事前の
書面による承諾なく第三者に開示・漏洩してはならない。
2. 受領者は、秘密情報を本業務の目的以外に利用してはならない。
3. 受領者は、秘密情報へのアクセスを、本業務に従事する
必要最小限の者に限定するものとする。
第4条(秘密情報の管理)
受領者は、自己の秘密情報と同等以上の注意をもって
秘密情報を管理するものとし、施錠管理、アクセス制限等の
合理的な安全管理措置を講じるものとする。
第5条(秘密情報の返還・廃棄)
本契約が終了した場合、または開示者から要請があった場合、
受領者は秘密情報(複製物を含む)を速やかに返還または廃棄し、
廃棄した場合はその旨を書面で通知するものとする。
第6条(損害賠償)
受領者が本契約に違反し開示者に損害を与えた場合、
受領者は当該損害を賠償する責任を負う。
第7条(有効期間)
1. 本契約の有効期間は、締結日から1年間とする。
2. 本契約の秘密保持義務は、本契約終了後3年間存続する。
第8条(合意管轄)
本契約に関する紛争は、○○地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。
年 月 日
甲:株式会社○○○○ 代表取締役 ○○ ○○ 印
乙:株式会社△△△△ 代表取締役 ○○ ○○ 印
NDAのポイント
- 第1条の秘密情報の定義は広すぎず狭すぎず。口頭開示は書面通知を条件にすることで範囲を明確化
- 第2条の除外事項は5つの標準的な除外を入れる。これがないと既に知っている情報も秘密扱いになる
- 第7条の存続期間は3年が一般的。5年を求められることもあるが、長すぎると実務上の負担が大きい
SES契約書チェックリスト
契約書を作成・確認する際に使えるチェックリストです。
基本事項チェック
- 契約当事者の正式名称・住所が正しい
- 契約の種類(準委任/請負)が明確
- 契約期間の開始日・終了日が記載されている
- 更新条件・中途解約条件が明記されている
- 双方の代表者の記名押印がある
業務内容チェック
- 業務内容が具体的に記載されている
- 作業場所が明記されている
- 使用技術・開発環境が記載されている
- 指揮命令権の所在が明確(SESの場合は受託側)
- 業務管理責任者が指定されている
報酬・精算チェック
- 月額単価(または請負代金)が明記されている
- 精算幅(上限・下限時間)が設定されている
- 超過・控除の計算方法が明記されている
- 締め日・支払日が記載されている
- 消費税の取り扱いが明確
- 振込手数料の負担先が記載されている
リスク管理チェック
- 損害賠償の上限額が設定されている
- 秘密保持条項が含まれている
- 知的財産権の帰属が明記されている
- 再委託の可否・条件が記載されている
- 反社会的勢力排除条項がある
- 合意管轄裁判所が指定されている
請負契約の追加チェック
- 納品物の範囲が明確
- 検収の方法・期間が記載されている
- 契約不適合責任の期間が設定されている
- 仕様変更の手続きが定められている
- 支払条件(着手金・中間金・残金)が記載されている
よくあるトラブル事例と対処法
事例1:偽装請負の指摘
状況: SES契約で常駐しているエンジニアに対し、クライアントのマネージャーが直接残業指示や業務指示を行っていた。労働局の調査で偽装請負と指摘された。
対処法:
- 契約書に指揮命令権の所在を明記する(第3条)
- 受託側に業務管理責任者を配置し、クライアントからの指示は管理責任者を経由させる
- 定期的にコンプライアンス研修を実施し、現場での運用を徹底する
予防策:
- 作業指示書の発行フローを整備する
- クライアントとの定例ミーティングで指揮命令の運用を確認する
事例2:精算幅のトラブル
状況: 契約書に精算幅を「140〜180時間」と記載していたが、超過・控除の計算方法が未記載だった。月200時間稼働した際に、超過分の単価を巡ってクライアントと揉めた。
対処法:
- 超過・控除の時間単価の計算式を個別契約に明記する
- 月額単価÷基準時間(通常160時間)で時間単価を算出し、契約書に記載
- 精算幅を超える見込みがある場合は、事前にクライアントに報告する
予防策:
- 稼働時間の見込みを月初に確認し、超過しそうな場合は早めに連絡する
- 月次の稼働報告を双方で確認する運用を徹底する
事例3:途中解約のトラブル
状況: 3ヶ月契約のうち1ヶ月で突然「来週で終了してほしい」と言われた。事前通知期間の定めがなく、翌月分の報酬を請求できるか揉めた。
対処法:
- 契約書に中途解約の場合の事前通知期間(通常1ヶ月前)を明記する
- 通知期間を守らない場合の違約金条項を設ける
- 「通知期間に相当する報酬を支払うことで即時解約可能」とする条項も有効
予防策:
- 1ヶ月前通知を基本とし、契約書に明記する
- クライアントとの関係が悪化した際は、早めに営業担当に相談する
事例4:成果物の知的財産権トラブル
状況: 請負契約で開発したプログラムについて、クライアントが全ての著作権を主張。しかし、プログラムの一部には受託側が以前から保有していた汎用ライブラリが含まれていた。
対処法:
- 契約書に既存の知的財産権の留保条項を入れる
- 汎用ライブラリは「利用許諾」として扱い、著作権は移転しない旨を明記
- 案件開始前に、使用する既存ライブラリのリストを合意しておく
予防策:
- 開発開始前に既存資産の棚卸しを行う
- 知的財産権の帰属をプロジェクト計画書にも記載する
事例5:NDA違反の疑い
状況: 退職したエンジニアが、前の案件で得た技術情報をブログに掲載。クライアントからNDA違反として損害賠償を請求された。
対処法:
- エンジニア個人にもNDA(誓約書)を締結させる
- 退職時に秘密保持義務の確認と注意喚起を行う
- 問題が発生した場合は速やかに弁護士に相談し、対象記事の削除など初動対応を行う
予防策:
- 入社時・退職時に秘密保持に関する研修を実施
- SNSやブログでの情報発信に関するガイドラインを策定する
契約書作成のベストプラクティス
1. 弁護士レビューを受ける
テンプレートはあくまで参考です。自社の事業に合わせてカスタマイズし、必ず弁護士のレビューを受けてから使用しましょう。特に初回は投資する価値があります。
2. 電子契約を活用する
クラウドサインやDocuSignなどの電子契約サービスを利用すれば、印紙税が不要になり、保管・検索も容易になります。SES業界では月次の注文書が多いため、コスト削減効果が大きいです。
3. 契約書のバージョン管理
法改正や判例の変化に対応するため、契約書のひな形は定期的に見直しましょう。バージョン番号を付け、いつ・何を変更したかを記録しておくことが重要です。
4. 現場運用との一致を確認する
契約書の内容と実際の現場運用が乖離していると、トラブルの原因になります。特に指揮命令権については、契約書どおりの運用がされているか定期的にチェックしましょう。
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まとめ
SES契約書は、ビジネスを守るための最も重要な書類です。テンプレートを活用しつつ、自社の状況に合わせたカスタマイズと専門家のレビューを受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
- SES事業には基本契約・個別契約・準委任契約・請負契約・NDAの5種類の契約書が必要
- 偽装請負防止のため、指揮命令権の所在と業務管理責任者を必ず明記する
- 精算幅・損害賠償上限・知的財産権の帰属は特にトラブルになりやすいため注意
- テンプレートは参考として活用し、必ず弁護士のレビューを受けてから使用すること
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