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SESの多重下請け構造(商流)とは?深い商流のデメリットと上げる方法

SESの多重下請け構造(商流)とは?深い商流のデメリットと上げる方法

SES多重下請け商流キャリア単価交渉
目次
⚡ 3秒でわかる!この記事のポイント
  • SESの「商流」とは発注元から現場エンジニアまでの会社の連なりのこと。深いほど手取りが少なくなる
  • 3次請け以降は単価から50〜70%が中間マージンとして引かれるケースもある。これが低年収の主因
  • 商流を上げるには「プライム案件を持つ会社への転職」「直接取引の実績作り」が最も効果的

「同じJavaエンジニアなのに、なぜあの人の年収は自分より200万円も高いのか?」

スキルや経験年数が同じくらいなのに、なぜか年収に大きな差が生まれる——その原因の一つが「商流の深さ」です。SES業界特有の多重下請け構造を理解せずにキャリアを進めると、気づかないうちに多くの取り分を中間業者に持っていかれてしまいます。

この記事では、SESの多重下請け構造(商流)の仕組みを徹底解説し、商流を上げるための具体的な方法まで詳しく説明します。

この記事でわかること
  • SESの商流とは何か、多重下請け構造の仕組み
  • 商流が深いことによる具体的なデメリット(単価・情報・責任)
  • 自分の商流の深さを確認する方法と面談での質問例
  • 商流を上げる(浅くする)ための実践的な方法
  • プライム案件を持つ優良SES会社の見分け方

SESの「商流」とは何か

商流の基本的な仕組み

「商流」とは、発注元(エンドユーザー)から作業をするエンジニアまでの間に存在する企業の連なりのことです。

一般的なSESの商流は以下のような構造になっています。

SESの商流構造(典型的な例)

エンドユーザー(発注元)
例:大手銀行、通信キャリア、官公庁など

↓ 委託契約(例:月額200万円)

プライムベンダー(1次請け)
例:大手SIer、NTTデータ、富士通、NECなど

↓ 再委託(例:月額150万円)

2次請け会社
例:中堅SIer、準大手SES会社

↓ 再委託(例:月額100万円)

3次請け会社
例:小規模SES会社

↓ エンジニア派遣

エンジニア(あなた)
手取り:月額60〜70万円相当

発注元からエンジニアまでの間に複数の会社が存在し、それぞれがマージン(中間手数料)を取ります。この結果、発注元が払っている金額の半分以下しかエンジニアに渡らないケースも珍しくありません。

商流の段数の定義

商流の呼び方立ち位置エンジニアまでの中間業者
プライム(1次請け)発注元と直接契約0社(直接)
2次請け1次請けから受注1社
3次請け2次請けから受注2社
4次請け以降さらに下の層から受注3社以上
「商流が深い」とは

エンジニアが3次請け・4次請け以降の会社に所属している状態を「商流が深い」と言います。深いほど中間マージンが多く引かれ、エンジニアの手取り単価が低くなります。

なぜ多重下請け構造が生まれるのか

歴史的な経緯

日本のIT業界では、大企業が自社でエンジニアを抱えるのではなく、外部に委託する慣行が根付いています。この背景には以下のような要因があります。

👤
なぜ大手SIerはエンジニアを全部直接雇わないんですか?多重下請けにした方が面倒じゃないですか?
👩‍💼
大手SIerにも理由があります。プロジェクトの規模は案件ごとに大きく変動するため、全員を正社員で雇うと案件がない時期に人件費がかさみます。また、特殊スキルを持つエンジニアを必要なときだけ調達する方が効率的という面もあります。ただし、その結果としてエンジニア側が不利益を被る構造が生まれています。

多重下請け構造が生まれる主な理由:

  1. リソース調整の柔軟性: プロジェクトの人員要件に応じて柔軟に人数を増減させるため
  2. 専門スキルの確保: 特定技術に特化した会社から必要なスキルセットを調達するため
  3. リスクの分散: 開発リスクを下位の会社に転嫁するため
  4. 商習慣: 「知り合いの会社に仕事を回す」という慣行が業界に根付いているため

法的な問題(偽装請負)

偽装請負に注意

SESは本来「準委任契約」ですが、実態は発注元が直接指揮命令する「偽装請負」になっているケースがあります。多重下請け構造が深くなるほど、誰が誰に指揮命令を出しているか不明確になり、労働法上の問題が生じやすくなります。2026年現在、厚生労働省もこの問題を重視しており、SES会社への指導・調査が強化されています。

商流が深いことの具体的なデメリット

デメリット1:単価(年収)が低くなる

最も直接的な影響です。エンドユーザーが払っている単価から、各中間業者がマージンを差し引いた残りがエンジニアに渡ります。

商流の深さと単価の関係(試算例)

エンドユーザーの支払額:月額200万円と仮定した場合

  • プライム(1次請け)直属のエンジニア: 130〜160万円(手取り約80〜100万円)
  • 2次請けのエンジニア: 90〜120万円(手取り約60〜75万円)
  • 3次請けのエンジニア: 60〜80万円(手取り約40〜55万円)
  • 4次請け以降のエンジニア: 50〜65万円以下(手取り約35〜45万円以下)

※各社のマージン率は20〜30%として試算。実際はさらに変動あり。

同じ現場で同じ仕事をしていても、商流の深さで月収が30〜50万円変わることがあります。年間換算では360〜600万円の差です。

デメリット2:情報が正確に伝わらない

複数の会社を経由する過程で、プロジェクトの情報が歪んで伝わります。

情報伝達の問題が起きるケース:

  • 現場で発生した仕様変更が、エンジニアの所属会社に正確に届かない
  • スケジュール変更の連絡が3日後に届く(現場では当日に知らされている)
  • プロジェクトの終了・延長の情報が最後に届き、次案件の準備が遅れる
  • 評価フィードバックが所属会社経由で来るため、内容が削ぎ落とされている
  • エンドユーザーの方針変更がエンジニアに伝わるまでに1〜2週間かかる

デメリット3:責任の所在が不明確になる

商流が深くなるほど、問題が起きたときに誰が責任を取るのかが不明確になります。

👤
トラブルが起きたとき、誰に相談すればいいのか分からなくて困ったことがあります。
👩‍💼
これは多重下請けの典型的な問題です。「現場の担当者→2次請け担当→3次請け担当→あなたの会社」というように、何かあるたびに伝言ゲームになります。緊急対応が必要なのに、承認が降りるまでに数日かかるケースも実際にあります。

責任の不明確化による問題:

  • バグ・障害発生時の対応責任の押し付け合い
  • 成果物の品質基準が各社で異なり、「やり直し」が多発
  • 残業・休日出勤の判断が誰の権限なのか不明確
  • エンジニアが不当な評価を受けても、所属会社が把握・改善できない

デメリット4:キャリア形成の機会が限られる

上流工程(要件定義・基本設計)への参画機会は、商流が浅い(発注元に近い)ポジションに集中する傾向があります。

フェーズプライム・2次請け3次請け以降
要件定義担当機会ありほぼなし
基本設計担当機会あり限定的
詳細設計担当機会ありあり
実装担当機会ありメイン
テスト担当機会ありメイン
顧客折衝担当機会ありほぼなし

3次請け以降のエンジニアは、実装・テストフェーズに集中しがちで、上流の経験を積みにくい構造になっています。これがキャリアの天井につながります。

デメリット5:コミュニケーションコストが高い

多重下請け構造のコミュニケーション問題
  • 質問・相談が「自分→所属会社担当→2次請け担当→現場PM」と何段階も経由する
  • 「誰にどこまで相談していいか」が不明確
  • 現場の雰囲気・文化が掴みにくく、孤立しやすい
  • 評価・フィードバックが歪んで伝わる、または伝わらない

自分の商流の深さを確認する方法

所属会社に直接確認する

最もシンプルな方法です。営業担当に「今回の案件の商流は何次請けになりますか?」と聞きましょう。

ただし、会社によっては「2次請けです」と言いながら実際は3次請けというケースもあります(間の会社が自社の関連会社だったり、商流が複雑で把握していなかったりする)。

面談時に確認する

案件の面談時に逆質問として確認するのが最も正確です。

商流確認のための逆質問例:

  • 「今回の案件はどちらが直接の発注元になりますか?」
  • 「御社とエンドユーザーさんの間には何社かいらっしゃいますか?」
  • 「プロジェクトマネージャーはどちらの会社の方が担当されていますか?」
商流を見極めるサイン
  • 面談に複数の会社が参加している: 自社営業+別会社担当が来ている場合は2次請け以降の可能性が高い
  • 案件票に「エンドユーザー先への常駐」と書いてある: プライム〜2次請けの可能性
  • スキルシートの提出先が不明: 何社かを経由して最終的にどこに渡るか分からない場合は商流が深い

商流を上げる(浅くする)ための方法

方法1:プライム案件を持つSES会社に転職する

最も効果的な方法です。エンドユーザーと直接契約しているSES会社(プライムベンダー)に所属すれば、一気に商流が浅くなります。

プライム案件を持つ会社の見分け方:

  • 会社の主要取引先に大手ユーザー企業(製造業・金融・小売など)が記載されている
  • 自社開発・自社サービスを保有している(自社プロダクトを持つ会社はプライムになりやすい)
  • 面談が「クライアント企業の人事担当」も参加する形式(2次請けだと現場PMのみが多い)
  • 求人票に「プライム案件多数」「元請け案件」と明記されている
  • マージン率を開示しており、エンジニアへの還元率が高い(70%以上を公言している会社は要チェック)

方法2:スキルを高めて上位の案件を狙う

商流が深い案件が集まりやすいのは、実装・テストフェーズです。設計・要件定義フェーズに参画できるスキルを身につけることで、必然的に商流が浅い案件にアクセスしやすくなります。

上流工程に参画するために高めるべきスキル:

  • 要件定義・業務分析のスキル(顧客の要求を整理する能力)
  • UML・ER図などの設計ドキュメント作成能力
  • プレゼン・ファシリテーション能力(顧客との折衝経験)
  • プロジェクトマネジメントの基礎(WBS・リスク管理)

方法3:フリーランスとして直接取引を目指す

経験年数が5年以上あり、特定分野での実績があるなら、エンドユーザーや1次請けのSIerと直接業務委託契約を結ぶフリーランス化も有力な選択肢です。

フリーランス化のメリット
  • 中間マージンなしでエンドユーザー単価を全額受け取れる
  • 複数の案件を掛け持ちして収入を増やせる
  • 自分でクライアントを選べるため、良い商流の案件だけを選択できる
フリーランス化のデメリット
  • 案件が途切れた際の収入リスクを自分で負う
  • 社会保険・確定申告などの手続きを自己管理する必要がある
  • 経験・実績が少ないうちは直接取引が難しい

方法4:社内でプライム案件担当チームへの異動を目指す

現在の会社がプライム案件も持っている場合は、社内異動が最もリスクの低い方法です。上司や営業担当に「プライム案件に参画したい」と明確に意思表示しましょう。

社内異動を成功させるためのアプローチ:

1

意思表示をする

半期・年次評価面談で「プライム案件での上流工程に挑戦したい」と明確に伝える。言わないと機会はこない。

2

スキルの証明

現在の案件での実績(品質・スピード・コミュニケーション)を積み上げ、上流工程を任せられる人材だと証明する。

3

資格・スキルの取得

基本情報技術者・応用情報技術者・プロジェクトマネージャー試験などの取得で、上流工程への意欲を示す。

4

社内人脈の構築

プライム案件担当チームのメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、次案件でのチーム参加の機会を狙う。

プライム案件を探す実践的な方法

転職エージェントの活用

SES専門の転職エージェントは、各SES会社の商流情報を持っています。「プライム案件が多い会社に絞って紹介してほしい」と最初から伝えましょう。

エージェントへの質問ポイント:

  • 「紹介してもらう会社の主要案件はプライムですか、それとも2次請け以降が多いですか?」
  • 「エンジニアへの単価の還元率はどのくらいですか?」
  • 「エンドユーザーと直接取引している実績はありますか?」

求人票の読み方

プライム案件が多い会社の求人票には、以下のような特徴があります。

  • 「元請け案件中心」「プライムベンダーとして〇〇業界の顧客を担当」と明記
  • 年収レンジが高め(スキルに対して適正な水準)
  • 自社製品・サービスの記載がある
  • 資本金・従業員数が一定規模以上(大手SIerが下請けに出す際、小規模会社を避けることがある)
  • 「大手有名企業の現場に入れます」という訴求(現場に入れるだけで商流は不明)
  • 「月収60万円以上確約」など過剰な訴求(実態が伴わないことが多い)
  • 具体的な取引先企業名が一切書かれていない

現在の状況を確認するための面談での質問

案件の面談に臨む前に、営業担当に以下を確認しておきましょう。

商流を確認するための事前質問チェックリスト
  • 「この案件の発注元(エンドユーザー)はどちらですか?」
  • 「弊社(エンジニアの所属会社)はこの案件において何次請けになりますか?」
  • 「面談に参加するのはどちらの会社の方ですか?」
  • 「案件が終わった後の次案件でも同様の商流ですか、それとも案件によって異なりますか?」
  • 「単価に関しては、エンドユーザーから弊社への支払単価をざっくり教えていただけますか?」

商流に関するよくある誤解

👤
「プライム案件」と言われたのに、実際の現場に行ったら別の会社の人ばかりでした。これってどういうことですか?
👩‍💼
「プライム案件」という言葉の定義が会社によって異なる場合があります。「弊社がプライムです」というのは「弊社がエンドユーザーと直接契約している」という意味のこともあれば、「弊社が受注した案件(ただし下請けの下請け)」という意味のこともあります。必ず「エンドユーザーとの直接契約か」を明確に確認しましょう。

多重下請け構造の今後の動向(2026年)

DX推進による構造変化

近年、大手ユーザー企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を内製化しようとする動きが加速しています。これにより、従来の多重下請けモデルに変化が生じています。

エンジニアにとってのプラス変化
  • 内製化を進めるユーザー企業が、直接エンジニアを採用・登用するケースが増加
  • フリーランスエンジニアとの直接契約(直請け)が一般化しつつある
  • エンジニアのスキルが高いほど、プライムに近い位置で仕事を得やすくなっている
引き続き残る課題
  • 中小SES会社の多重下請けモデルは依然として根強く残っている
  • 若手・経験の浅いエンジニアは商流の深い案件からしか入れないケースが多い
  • 偽装請負・多重派遣の問題は完全には解消されていない

よくある質問(FAQ)

3次請けに所属していますが、今すぐでも商流を上げることはできますか?
「今すぐ」は難しいですが、1〜2年の計画で改善できます。まずは現在の案件でしっかりとした実績を作り、スキルシートを磨くことが先決です。その上で、転職活動を通じてプライム案件を多く持つ会社を探すのが現実的なアプローチです。焦らず、着実にキャリアを積み上げましょう。
商流が深くても良い現場はありますか?
あります。3次請けであっても、大規模プロジェクトの面白い技術領域を担当できたり、優秀なエンジニアに囲まれて成長できる環境であれば、短期的には価値があります。ただし、長期的には商流を上げることが年収・キャリアの両面で有利です。現場の質と商流の深さを天秤にかけて判断しましょう。
マージン率が開示されている会社は信頼できますか?
マージン率を開示している会社は、透明性という観点で信頼できます。ただしマージン率だけでなく、「どんな案件があるか」「実際の単価水準」「残業・待機の実態」も合わせて確認が必要です。マージン率の開示は最低条件と考え、その他の条件もしっかり確認しましょう。
SES会社に「商流は何次請けですか」と聞いても教えてもらえますか?
信頼できる会社は正直に答えます。「それはお伝えできません」「分かりません」という回答が来る場合は、深い商流であることを隠しているか、自社で把握できていないかのどちらかです。開示を嫌がる会社への転職・参画はリスクが高いと判断してよいでしょう。
商流を上げたいとき、転職先の候補はどうやって見つければよいですか?
SES専門の転職エージェント(レバテックキャリア、ウィルオブテック、TechClipsなど)を活用するのが効率的です。最初の面談で「プライム案件が多い会社に特化して紹介してほしい」と伝えると、絞り込んでもらえます。また、LinkedInやIT勉強会などのコミュニティで人脈を広げ、プライムで活躍しているエンジニアから紹介してもらう方法も有効です。

まとめ

多重下請け構造と商流アップのまとめ
  • 商流が深いほど単価が低く・情報が歪み・キャリアが詰まる
  • 自分の商流の深さは面談前に必ず確認する習慣をつける
  • 最も効果的な改善策はプライム案件を多く持つ会社への転職
  • 上流工程のスキルを磨くことで、自然と商流の浅い案件にアクセスしやすくなる
  • 2026年のDX内製化トレンドはエンジニアにとってチャンス。スキルを磨いて直接取引を狙える立場を目指そう

多重下請け構造はSES業界の構造的問題であり、一人のエンジニアがすぐに変えられるものではありません。しかし、自分のキャリアの選択によって、より良い商流のポジションに移ることは十分に可能です。まずは自分の現状を正確に把握し、一歩ずつ商流を上げる行動を取り始めましょう。


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SES BASE 編集長

SES業界歴10年以上のメンバーが在籍する編集チーム。SES企業での営業・エンジニア経験、フリーランス独立経験を持つメンバーが、業界のリアルな情報をお届けします。

📊 業界データに基づく記事制作 🔍 IPA・経済産業省データ参照 💼 SES実務経験者が執筆・監修