- 多重下請けでは商流が1つ深くなるごとに単価が10〜20%目減りする
- 2026年はフリーランス保護法や還元率の透明化で業界が変わりつつある
- 商流の浅い企業やプライムSES企業を選ぶことでリスク回避が可能
「自分の単価がいくらなのか教えてもらえない」「何社も間に入っている気がする」——SESエンジニアなら一度は感じたことがある疑問ではないでしょうか。
SES業界には多重下請け構造と呼ばれる商習慣が存在し、これがエンジニアの単価や働き方に大きな影響を与えています。本記事では、多重下請けの仕組みとリスクを解説し、2026年の最新動向を踏まえた具体的な回避策をお伝えします。
- SES多重下請け構造の仕組みとエンジニアへの影響
- 多重下請けの3大リスク
- 2026年の業界変化(法改正・透明化の動き)
- 多重下請けを避ける具体的な方法
SES多重下請け構造とは?仕組みをわかりやすく解説
SESの多重下請け構造を理解するには、まず「商流」の概念を知る必要があります。
商流の深さとエンジニアへの影響
SES業界の商流とは、エンドクライアント(発注企業)からエンジニアまでの間に介在する企業の連鎖のことです。
典型的な商流の例を見てみましょう。
エンドクライアント(月額100万円で発注)
↓ マージン15万円
元請けSIer(月額85万円で再委託)
↓ マージン10万円
2次請けSES企業(月額75万円で再委託)
↓ マージン10万円
3次請けSES企業(月額65万円で契約)
↓ マージン15万円
エンジニアの所属企業(エンジニアに月額50万円を支給)
この例では、エンドクライアントが100万円を支払っているのに、エンジニアに届くのは50万円——つまり50%が中間マージンとして消えていることになります。
多重下請けが生まれる業界構造
なぜこのような構造が存在するのか。主な理由は以下の通りです。
- 大手SIerの人材調達モデル: 大規模案件で数十〜数百名のエンジニアを短期間で集める必要があるため、複数のSES企業に声をかける
- SES企業の営業ネットワーク: 自社エンジニアだけでは案件を埋められないため、パートナー企業に再委託する
- 参入障壁の低さ: SES企業の開業はハードルが低く、小規模企業が乱立している
- 情報の非対称性: エンジニアが自分の商流の深さを知る手段が限られている
この構造は日本のIT業界特有のものであり、経済産業省のIT人材需給調査でも課題として指摘されています。
多重下請けの3大リスク
多重下請け構造には、エンジニアにとって以下の3つの大きなリスクがあります。
単価の中間搾取
最も直接的なリスクが単価の目減りです。商流が1層深くなるごとに、一般的に10〜20%のマージンが発生します。
| 商流 | エンド発注額 | エンジニア受取額 | 還元率 |
|---|---|---|---|
| 1次(直案件) | 80万円 | 64万円 | 80% |
| 2次 | 80万円 | 56万円 | 70% |
| 3次 | 80万円 | 48万円 | 60% |
| 4次以上 | 80万円 | 40万円以下 | 50%以下 |
同じスキル・同じ業務内容でも、商流の深さだけで月額10〜20万円の差が生まれるのが多重下請けの現実です。
責任の所在が曖昧
商流が深くなると、トラブル発生時の責任の所在が曖昧になります。
- エンジニアへの指示系統が複雑化し、指揮命令の実態と契約が乖離するリスク
- 偽装請負(実質的な労働者派遣)に該当する可能性
- 契約上の責任と実務上の責任のミスマッチ
これは法的リスクにも直結する問題です。
キャリア形成への悪影響
多重下請けの末端にいると、以下のようなキャリア上の不利益があります。
- エンドクライアントとの直接コミュニケーション機会が減少
- 上流工程(要件定義・設計)に関与しにくい
- スキルアップの機会が限られる
- 「どの案件で何をしたか」がスキルシートに書きにくい
2026年の業界変化|還元率の透明化と法改正
ポジティブなニュースとして、2026年は多重下請け構造に変化の兆しが見えています。
フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の本格運用が2024年11月から始まり、2026年には運用実績が蓄積されてきました。この法律により、以下のような変化が起きています。
- 契約条件の書面交付義務: 曖昧な口約束による契約が減少
- 報酬の支払期日の明確化: 60日以内の支払いが義務化
- 一方的な契約変更の禁止: 突然の単価引き下げに歯止め
また、SES業界内でも還元率を公開する企業が増加しています。「還元率80%以上」を売りにするプライムSES企業が台頭し、エンジニアの企業選びの基準が変わりつつあります。
多重下請けを避ける具体的な方法
では、エンジニアとして多重下請けのリスクを回避するにはどうすればよいのでしょうか。
商流の浅い企業の見分け方
面談や企業選びの際に確認すべきポイントは以下の通りです。
- 「商流は何次ですか?」と直接聞く: まともな企業なら正直に答えてくれる
- エンドクライアント名を教えてもらえるか: 商流が深い場合、エンド名を知らないケースも
- 還元率を公開しているか: 公開していない企業は要注意
- 自社案件の比率: 自社で直接取引している案件が多いほど商流は浅い
- 社員数と案件数のバランス: 社員数に対して案件数が多すぎる場合、再委託が多い可能性
フリーランス・プライムSES企業の活用
多重下請けを構造的に回避する方法として、以下の選択肢があります。
1. フリーランスとして直接契約
- エージェント経由でもエンドクライアントとの直案件を狙える
- 商流は最大でも2次に収まることが多い
- 単価交渉の主導権を持てる
2. プライムSES企業に所属
- 元請けとしてエンドクライアントと直接取引するSES企業
- 還元率が70〜80%と高い傾向
- エンジニアのキャリア支援に積極的な企業が多い
3. SES BASEなどの案件検索プラットフォームを活用
- 商流の透明性が高い案件を探せる
- 複数企業の条件を比較できる
多重下請け構造の詳細については「SES多重下請け構造ガイド」や「SESマージン率ガイド」も参考にしてください。また、単価の透明性については「SES単価教えてくれない問題」で詳しく解説しています。
まとめ|自分のポジションを正しく理解する
SES多重下請け構造は業界の根深い課題ですが、2026年は確実に変化が起きています。
- 自分の商流の深さを把握することが第一歩
- 還元率を公開する企業が増加中——比較検討が容易に
- フリーランス保護法により契約の透明性が向上
- 商流の浅い企業やプライムSES企業を選ぶことでリスク回避
「なんとなく」で企業を選ぶのではなく、商流・還元率・契約条件を確認する習慣を持つことで、適正な単価とキャリアを守ることができます。

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