- A2A(Agent-to-Agent)はGoogleが提唱するエージェント間通信の標準プロトコル
- OpenClawのA2A対応で、異なるAIプラットフォーム間のエージェント協調が実現
- リサーチ×執筆、コードレビュー×テストなどの実践的なワークフロー構築が可能
AIエージェントが1つのタスクを自律的にこなす時代は、すでに到来しています。しかし次のフロンティアは、複数のAIエージェントが協調して複雑なワークフローを実行する世界です。
OpenClawのA2A(Agent-to-Agent)プロトコル対応により、この未来が現実になりました。本記事では、A2Aプロトコルの基本から、OpenClawを使ったマルチエージェントワークフローの構築方法まで実践的に解説します。
- A2Aプロトコルの仕組みとMCPとの違い
- OpenClawでのA2Aサーバー/クライアントのセットアップ方法
- マルチエージェントワークフローの実践ユースケース3選
A2A(Agent-to-Agent)プロトコルとは
Googleが提唱するエージェント間通信規格
A2A(Agent-to-Agent)プロトコルは、Googleが2025年に発表したAIエージェント間の通信標準規格です。Google Cloud Blogで詳しく紹介されています。
A2Aの核心的なアイデアは、異なるプラットフォーム上で動作するAIエージェントが、共通のプロトコルで会話・タスク委任・結果共有できるようにすることです。
A2Aの主要コンポーネントは以下の通りです。
- Agent Card: エージェントの能力・スキルを記述するメタデータ(JSON形式)
- Task: エージェント間でやりとりされるタスクの単位
- Message: タスク内での会話メッセージ
- Artifact: タスクの成果物(ファイル、データ、レポート等)
// Agent Cardの例
{
"name": "Research Agent",
"description": "Web検索とドキュメント分析を行うリサーチエージェント",
"url": "https://agent.example.com/a2a",
"skills": [
{
"id": "web-research",
"name": "Web Research",
"description": "指定されたトピックについてWeb検索で情報を収集"
},
{
"id": "document-analysis",
"name": "Document Analysis",
"description": "PDFやWebページの内容を分析・要約"
}
]
}
MCPとの違い(ツール連携 vs エージェント間協調)
A2AとMCP(Model Context Protocol)は、しばしば混同されますが、対象とするレイヤーが異なります。
| 項目 | MCP | A2A |
|---|---|---|
| 対象 | モデル ↔ ツール | エージェント ↔ エージェント |
| 通信パターン | リクエスト/レスポンス | 非同期タスク管理 |
| 状態管理 | ステートレス | ステートフル(タスク状態を追跡) |
| 典型的な用途 | DB操作、API呼び出し | タスク委任、協調作業 |
| 例 | 「このSQLを実行して」 | 「この記事を調査して執筆して」 |
MCPはツールの呼び出し(「SQLを実行して結果を返して」等)に特化しているのに対し、A2Aはエージェント間の高度なタスク委任と協調を実現します。両者は競合ではなく補完関係にあり、A2A対応エージェントの中でMCPツールを利用するのが典型的なパターンです。

OpenClawのA2Aプロトコル対応状況
A2Aサーバー/クライアント機能の概要
OpenClawはA2Aプロトコルのサーバーとクライアントの両方をサポートしています。
A2Aサーバー機能(他のエージェントからタスクを受け取る):
- OpenClawのエージェントをA2Aサーバーとして公開
- Agent Cardの自動生成
- タスクの受信・実行・結果返却
A2Aクライアント機能(他のエージェントにタスクを委任する):
- 外部A2Aエージェントの検出・接続
- タスクの送信と進捗追跡
- 成果物(Artifact)の受信と処理
対応バージョンと設定方法
A2A機能はOpenClaw v1.8以降で利用可能です。設定方法は以下の通りです。
// openclaw.json
{
"a2a": {
"enabled": true,
"server": {
"port": 8080,
"basePath": "/a2a",
"auth": {
"type": "bearer",
"token": "${A2A_AUTH_TOKEN}"
}
},
"clients": [
{
"name": "research-agent",
"url": "https://research.example.com/a2a",
"auth": {
"type": "bearer",
"token": "${RESEARCH_AGENT_TOKEN}"
}
}
]
}
}
セットアップ手順:
openclaw.jsonにA2A設定を追加- 認証トークンを環境変数に設定
openclaw gateway restartでゲートウェイを再起動curl http://localhost:8080/a2a/.well-known/agent.jsonでAgent Cardを確認
A2Aでマルチエージェントワークフローを構築する
OpenClaw ↔ Gemini CLI のエージェント連携
OpenClawとGoogle Antigravity(Gemini CLI)をA2Aで連携させることで、それぞれの強みを活かしたワークフローを構築できます。
| エージェント | 強み | 担当タスク例 |
|---|---|---|
| OpenClaw | 自律的なタスク実行、cron連携、マルチチャネル | ワークフロー管理、定期実行、通知 |
| Gemini CLI | Google Search連携、大規模コンテキスト | Web調査、コードベース分析 |
連携の例: 技術調査→レポート作成パイプライン
# ワークフロー定義
workflow:
name: "Tech Research Pipeline"
steps:
- agent: "gemini-research"
task: "React 19の最新機能について調査して主要な変更点をまとめて"
output: "research_report"
- agent: "openclaw-writer"
task: "調査結果を元にブログ記事を作成して"
input: "${research_report}"
output: "blog_article"
- agent: "openclaw-publisher"
task: "記事をCMSに投稿してSNSで告知して"
input: "${blog_article}"
OpenClaw ↔ 外部AIサービスの連携パターン
A2Aはオープンプロトコルのため、A2A対応している任意の外部AIサービスと連携できます。
連携可能なサービス例:
- Google Agentspace: エンタープライズ検索・ナレッジ管理
- LangGraph Cloud: 複雑なグラフベースのワークフロー
- 自社開発エージェント: A2Aサーバーを実装した社内AIサービス
タスク委任とレスポンス管理
A2Aでのタスク管理は非同期で行われます。タスクの状態遷移は以下の通りです。
submitted → working → completed
→ failed
→ canceled
OpenClawからのタスク委任の流れを説明します。
# OpenClawのエージェントからA2Aタスクを委任
# (内部的な処理フロー)
1. タスク作成: POST /a2a/tasks
→ taskId: "task-abc123"
→ status: "submitted"
2. 進捗確認: GET /a2a/tasks/task-abc123
→ status: "working"
→ progress: "60%"
3. 完了確認: GET /a2a/tasks/task-abc123
→ status: "completed"
→ artifacts: [{ type: "text/markdown", content: "..." }]
長時間タスクの場合、**Server-Sent Events(SSE)**でリアルタイムに進捗を受信することも可能です。
実践ユースケース
リサーチエージェント × 執筆エージェントの記事作成パイプライン
最も実践的なユースケースの一つが、調査と執筆を分離したコンテンツ作成パイプラインです。
フロー:
- リサーチエージェント(Gemini CLI + Google Search)がトピックを調査
- 調査結果をA2A Artifactとして構造化データで返却
- 執筆エージェント(OpenClaw)が調査結果を元に記事を執筆
- 品質チェックエージェントがSEO・文法・ファクトチェックを実行
- 問題があれば執筆エージェントに差し戻し
このパイプラインにより、1記事あたりの作成時間を従来の1/3に短縮しながら、情報の正確性も向上させることができます。
コードレビューエージェント × テストエージェントのCI連携
GitHub ActionsやGitLab CIと連携し、PRのコードレビューとテスト生成を自動化するパターンです。
フロー:
- PR作成をトリガーにOpenClawのCIエージェントが起動
- コードレビューエージェントがコード変更の品質チェックを実行
- 問題がなければテスト生成エージェントにタスクを委任
- テストエージェントが変更に対応するユニットテストを自動生成
- テストをPRに自動コミット
監視エージェント × 対応エージェントのインシデント自動対応
24時間稼働の監視→一次対応→エスカレーションのパイプラインです。
フロー:
- 監視エージェントがCloudWatch / Datadogのアラートを受信
- アラートの重要度を分析し、低〜中レベルの場合は対応エージェントにタスクを委任
- 対応エージェントが定型的な対応(プロセス再起動、スケーリング等)を実行
- 高レベルのアラートは人間のオンコールエンジニアにSlack通知
- すべてのインシデントをログに記録し、レトロスペクティブレポートを自動生成
セキュリティとアクセス制御
A2A認証の仕組み
A2Aプロトコルは複数の認証方式をサポートしています。
| 認証方式 | 適用シーン | セキュリティレベル |
|---|---|---|
| Bearer Token | 開発環境、信頼されたネットワーク | 基本 |
| OAuth 2.0 | エンタープライズ環境 | 高い |
| mTLS | 金融・医療等の高セキュリティ環境 | 最高 |
OpenClawでは、openclaw.jsonの認証設定でこれらを柔軟に構成できます。
エージェント間の権限分離
マルチエージェント環境では、各エージェントに最小限の権限のみを付与することが重要です。
- リサーチエージェント: 読み取り専用。Web検索とドキュメント分析のみ
- 執筆エージェント: 特定ディレクトリへのファイル書き込みのみ
- CI/CDエージェント: GitHub API(PR作成・コメント)のみ
- 監視エージェント: 監視ツールAPIの読み取り+特定の対応アクション
OpenClawのエージェント設定でスキルとMCPツールの利用範囲を制限することで、権限の最小化を実現します。
まとめ:A2Aが拓くAIエージェントのエコシステム
A2Aプロトコルは、AIエージェントの世界に**真のインターオペラビリティ(相互運用性)**をもたらします。OpenClawのA2A対応により、異なるAIプラットフォームのエージェントが協調して動作するマルチエージェントワークフローが現実のものとなりました。
- A2AはGoogleが提唱するエージェント間通信の標準プロトコル
- MCPとは補完関係(ツール連携 vs エージェント協調)
- OpenClawはA2Aのサーバー/クライアントの両方をサポート
- 調査→執筆、レビュー→テスト、監視→対応のパイプラインが構築可能
- 認証・権限分離でセキュアなマルチエージェント環境を実現
**AIエージェントの未来は「協調」にあります。**A2Aプロトコルを使ったマルチエージェントワークフローの構築を、ぜひ始めてみてください。
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